2008年08月26日

榊原清則「経営学入門(上)」続

〇第4章「経営戦略論」

〈ポイント〉

・組織が目指す将来像の明確化が、戦略策定の大前提です。戦略策定は、@環境の分析、A自社の独自能力の分析、B環境条件と独自能力の適合からなります。

・資源戦略は、ヒト、モノ、カネ、ノウハウといった経営資源をいかに獲得・蓄積・配分するかの意思決定です。経験効果、ポートフォリオ・アプローチなどの考え方があります。

・競争戦略は、産業内で高い成果を上げ、それを維持するために企業が行う意思決定です。コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略に分けられます。

・組織の活動範囲ないしは領域(ドメイン)を決定するのがドメイン戦略です。

〈個別事項〉

・経営実務の世界ではMOGST(モグスト)という表現が使われる場合がある。この順序できちんと規定することが重要である。
@M(mission)…使命
AO(objection)…目標
BG(goals)…目的
CS(strategy)…戦略
DT(tactics)…戦術

・戦略策定のプロセス
@インサイド・アウト…組織体の内側から外をみて環境を洞察する見方
Aアウトサイド・イン…環境の側から組織をみる見方
→事と次第に応じて、両方の視点をうまく使い分けることが大切

・「戦略的」ということの意味
@短期よりも中長期にかかわる
A後手後手ではなく先手
B「あるべきこと」や「なすべきこと」についての一定の考え方がある
C成長をめざす
Dメリハリをつける
E資源の希少性を意識できる
F機会費用の概念を重視する
G有言実行

・戦略論がとりあげる経営資源は、大別すると2つある。
@有形経営資源…ヒト、モノ、カネなど物的な経営資源
A無形経営資源…ノウハウ、信用、のれん、ブランドなど物的でない経営資源

・経験効果曲線とは、累積生産量が2倍になるごとに単位費用が85%になる、という現象を表したものである。

・経験効果曲線から、3つの価格戦略が導かれる。
@上澄み価格戦略…市場が大きく成長を始める前に利益を獲得する戦略。通常「市場一番乗り」を得意とする企業は、この戦略を選好する傾向がある。
A成長志向価格戦略…市場が十分成長したときに大きな利益を獲得しようとする。大規模市場で安定した高シェアが獲得できる企業には合理的である。
B利益志向価格戦略…市場の急成長段階に高価格を追求する戦略。長期の市場シェアを犠牲にして、成長段階にまとまった利益を獲得しようとする。

・経験曲線効果は次のような戦略の合理性を推奨する。
@市場成長の初期段階に攻撃的な設備投資を敢行する
A事業領域としては、累積生産量の蓄積が素早く進む製品(サービス)カテゴリーに焦点を当てる(あるいはそうした製品・サービスを意識して開発する)
B利益を追求するより、まずは市場シェア最大化を優先した戦略行動をとる
C結果として飛び抜けたシェア格差の構築をめざす(bP、bQ主義へ)

・ポートフォリオ・アプローチは、ヨコ軸に相対市場シェア、タテ軸に産業(市場)全体の成長率を表し、全体としての収益性と成長性のバランスの問題を、会社内部のキャッシュフロー・バランスの観点から議論する。

・競争戦略論において、ポーターは5要因モデルを構築した。
@新規参入の脅威
A代替品(代替サービス)の脅威
B買い手の交渉力
C売り手(サプライヤー)の交渉力
D既存の競争相手との敵対関係

・競争戦略論が重視するのは、産業構造を変えるような企業の動きであり、結果としての長期的な収益性の変化である。

・競争戦略の3類型
@コストリーダーシップ…製品(サービス)の範囲を広くとり、産業における低コストプレイヤーを確立する。産業内のリーダー的企業だけが追求できる。
A差別化…何らかの次元でユニークさを打ち出し、それによってプレミアムの獲得をめざす。差別化をめざす次元の絞り込みが必要。
B集中…産業の特定部分をターゲットセグメントとし、それだけに焦点を当てる。逆にいうと、産業全体での競争優位をめざさない前提をとる。産業全体にアプローチする他企業がどういう点で不十分かを見極めることが重要。下位類型には、コスト集中戦略と差別化集中戦略がある。

・「スタック・イン・ザ・ミドル」仮説は、複数の類型を同時並行して追求すると、多くの場合、高い成果は得られない、ということである。日本企業には今後重要になる仮説である。

・現実のビジネスは競争ばかりではない。価値相関図における競争相手と補完相手の存在は、競争と協調の両面を含む、「コーペティション」が必要であると、ネイルバフらは主張している。

・ドメイン戦略とは、組織の活動範囲や存在領域を決めることである。ドメイン戦略は、資源戦略や競争戦略よりMOGとの関係が緊密である。

・ドメインは定義が重要であるとともに、経営者と組織メンバーとのやりとりを通じて、あるいは企業組織と外部環境とのやりとりを通じて形成される、ドメインについての合意「ドメイン・コンセンサス」が必要である。

・企業のドメインを把握するために、3次元を使って表現する。
@空間の広がり…狭い、広い
A時間の広がり…静的、動的
B意味の広がり…特殊的、一般的

・ドメインは広ければ広いほど良いわけではない。プラスとマイナスのぶつかりあいのもとで、一つ一つの次元に沿って自社の位置づけをはっきりさせ、またそれを適宜改変していくことが課題である、

・日本企業は総合力に依存している。しかし、それは次の点で問題を抱えている。
@景気減速の局面では、部分的な整理縮小が難しい
A国際化が進展すると、部分的に海外進出しても強みを発揮できない
B情報化とネットワーク化の進展は、他社との提携でアプローチしにくい
→ドメイン戦略との関係で、経営の「全体」と「個別要素」との関係のあり方が問われるようになっている。個別要素を強調し、選別性を強化した新しいドメイン戦略が日本企業に求められている。
(読了)
posted by inodiet at 18:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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